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日本国内で使用される普通乗用車においては、「CVT」が採用されている割合が非常に高いです。しかし、CVTが何を意味しているのか、どんなメカニズムなのかを正しく理解している人はまだ少ないかもしれません。

かつてはATと呼ばれる「オートマチック・トランスミッション」が主流でしたが、最近はATよりも効率的、経済的と言われるCVTが注目を集めています。ここではCVTとATの機構の違いを考察するとともに、そのメリット、デメリットについて解説していきます。

CVTとは?

CVTは「Continuously Variable Transmission(コンティニューアスリー・バリアブル・トランスミッション)」の頭文字を取った略称です。その仕組みは無段変速機、または連続可変トランスミッションとなり、一般的なAT(オートマチックトランスミッション)とは異なりギア(歯車)を使用せず、プーリーとベルトを利用して変速を行う動力伝達システムです。

CVTのしくみ

cvt①
cvt①

一般的なATはギア(歯車)を使って変速を行いますが、CVTはエンジン側と車輪側に2対のプーリーが用いられ、ベルトを介して無段階に変速を行います。2対のプーリーの直径を変化させることでスムーズな加速を実現し、ギアを使わないので変速ショックも発生しません。また、決まったギアではなく無段階に最適な変速比を得ることができるので燃費性能の向上にも貢献します。

ギアを変えることで変速を行うATと比べ、シームレスな加速を実現するCVTはトランスミッションを構成するメカニズムがシンプルかつ低コストで製造でき、車両価格を抑えることができるのも大きなメリットと言えるでしょう。

CVT普及の歴史

CVTの歴史は1950年代へと遡ります。1959年にオランダの自動車メーカーであるDAF社がゴムベルトを用いたヴァリオマチックトランスミッションを自社のDAF600に採用したことが始まりとされています。その後、富士重工の人気モデルスバル・ジャスティにECVT(電子制御金属ベルト式CVT)を搭載したことをきっかけに、次第に量産車にも普及していきました。

スバル・ジャスティで量産化に成功したCVTは、日産、ホンダなどの日本製自動車メーカーが自社の技術を盛り込むことで進化を遂げ、今では世界中の自動車メーカーが採用するほどポピュラーな存在になりました。当初はパワーの少ない軽自動車やコンパクトカーに使われることがほとんどでしたが、最近は高出力エンジンでも対応が可能となり、より多くの車種で使われ始めています。

CVT車とAT車の違いは?

CVTは一般的に認知されるATのひとつであり、アクセルペダルとブレーキペダルで操作をする「AT限定」の普通自動車免許で運転することが可能です。一般的には同じものだとも思われがちですが、この両者にはどんな違いがあるのかを比較してみましょう。

 CVTAT
変速機の違い無段階な変速が可能複数のギアを使用
走行性能の違いスムーズな加速を実現高出力エンジンにも対応
外見上の違いコンパクトに設計できる構成する部品点数が多く重い

無段変速機(=CVT)と有段変速機(=AT)の違い

CVT、AT共に簡単かつ快適に運転できる便利なメカニズムとして私たちの生活に浸透しています。アクセルとブレーキの2ペダルで操作ができ、シフトチェンジ操作の必要がないという点では共通していますが、細かな部分では少しばかりの違いを見つけることができます。まず、ATは特定のギアを自動的にアップ/ダウンさせる有段変速機となり、CVTは“コマ”のような円錐形をした向かい合うプーリーの大きさを変更する無段変速機になります。

簡単に言えば有段変速機は“階段”、無段変速機は“滑り台”のようなもので、階段を下りる場合には脚に衝撃を感じますが、滑り台では滑らかに降りることができるのと同じ感覚です。ATの場合、滑らかさを追求する場合には階段の高さを低くし、段数を増やす「多段化」が必要になります。最近のATは4速から7速が一般的ですが、高級車に使用される9速や10速のATは部品点数の増加や複雑な製作工程によりコストがアップしてしまい、販売価格に転嫁できない軽自動車やファミリーカーには不向きとなるのです。

走行性能の違い

CVTとATの走行性能の違いは変速にギア(歯車)を使っているか、使っていないかの差になります。一般的なATはギアを自動的に変速する「有段変速機」のため、変速時にわずかなショックや振動を感じることがありますが、「無段変速機」であるCVTはスムーズな加速を実現します。

ATは高出力型のエンジンとの相性が良いとされ、CVTよりも耐久性が高いと評価されることがありますが、近年のCVTも技術進化により高出力対応や耐久性が大きく向上しています。また、CVTは常に最適なギア比で走行できるため、燃費性能に優れていると言われています。

CVT車とAT車を外見上で見分けるのは難しい

日常でクルマを使用していてCVTとATの違いに気付く人は少ないはずです。基本的な操作方法に違いはなく、唯一、違いを見つけることができるとすれば、シフトノブに記されたシフト表示です。一般的なATでは「P→R→N→D→3→2(L)」のようにアルファベットと数字が組み合わされた表示が使われることが多いです。一方、CVTの場合は「P→R→N→D→B」「P→R→N→D→S→B」などアルファベット表記のみが採用されることが多いです。しかし、ATと類似の表記をCVTにも採用するメーカーもあり、シフト表示だけで見分けるのは難しかったりします。

CVT②
CVT②

CVTにメンテナンスや交換は必要?

最近のクルマは精度が高まり、メンテナンスフリーを謳っているメーカーが増えています。もちろん定期交換部品は別ですが、CVTに関しても特別なメンテナンスは必要ありません。ひと昔前のCVTと比較すると使用される金属製のベルトの強度が著しく向上したこととCVT自体の組み立て精度が上がったことが大きな理由です。

メーカーによってはCVTをスムーズに可動させるために注入されているCVTフルード(オイル)もメンテナンスフリーと定めている場合もありますが、定期的な交換を推奨しているモデルではメーカーの基準に準じて整備を行いましょう。CVTフルードの交換は走行距離や使用環境によって異なりますが、一般的な目安として走行距離で2~5万㎞、または2~3年毎の交換を推奨している場合が多いようです。

CVT自体の修理・交換の相場は?

前項でも述べたように最近のCVTは精度と耐久性が向上し、メンテナンスフリーで乗り続けられる車種も多くなりました。しかし、使用状況によっては不具合が生じて修理、交換を強いられることがないとは言えません。一般的にCVTの寿命は10~15万㎞程度と言われ、乗用車の寿命と同じ程度と考えられています。修理の場合にはオーバーホールと呼ばれる分解修理となり、一般的に料金は20~50万円程度の費用が必要になります。

CVTを新品に交換する場合には30~50万円程度、高いものであれば100万円を超える場合もあります。また、新品部品以外にも中古品、リビルト品を選択することもできますが、中古部品の場合には同じトラブルを抱えている可能性もあるので避けることが賢明です。リビルト品に関しては中古部品にオーバーホールを施したものとなり、新品パーツよりも費用を安く抑えることが可能です。

CVTF(CVTフルード)の交換頻度や交換方法

CVTフルード(オイル)の交換を必要としないモデルもありますが、定期的な交換を推奨しているモデルも存在するので、自分が乗っているクルマの条件を事前に把握しておくことがトラブルを未然に防ぐことにつながります。車載されているサービスマニュアルを確認するか、ディーラーのWebサイト、または直接ディーラーで確認しておきましょう。一般的には走行距離が2~5万㎞、または2~3年に一度の交換が目安とされていますが、メーカーや車種によって異なるので注意してください。

また、整備を施す場合にはCVTフルードの交換は特殊工具や設備が必要になる場合が多く、交換時にゴミやホコリなどが混入してしまうとトラブルの原因になるのでディーラーまたは信頼できる整備工場を利用しましょう。

CVTのしくみを知れば、もっと車選びが上手になる!

CVTは新たな時代を象徴する快適なトランスミッションであることは間違いありません。最近は普通免許では70%を越える人がAT限定となり、新車販売される乗用車の98%以上がAT車と言われています。そんな時代だからこそCVTの快適さを武器にドライブを楽しみましょう。変速のショックがなく、常に最適なギア比で省燃費に貢献するCVT。次のドライブでは五感を研ぎ澄ませ、CVTの性能をじっくりと堪能してみてはいかがでしょうか?

企画監修・執筆

フリーライター/自動車ジャーナリスト

並木政孝

輸入車専門誌、アメ車専門誌の編集長を経て女性ブランド誌、腕時計、眼鏡など数多くの雑誌をプロデュース。その後フリーライターとして独立し、クルマ、アウトドア、建築、スポーツなど多方面で活躍する。

私生活ではクルマ、バイク、自転車、キャンプ、ルアーフィッシング、カヌー、スキューバダイビングなど楽しむ多趣味人としても知られている。

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